コロコロと興味の対象が移り行く音方による、日々の熱い物を綴ってみた日記。   ※アダルト・商業系サイトやここの記事とあまりにもかけ離れたTBやコメントは削除させて頂いています。悪しからずご了承下さい。


by otokata
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ペール・ゴリオ


 はい、やっと読み終わりました。 
バーティミアスは1日で読めるのに、やっぱり気構えが変わるのか、文体が変わるからか、理解するのに時間がかかるからか、3日ちょっとかかりました。私にしては速い方ですが。

『ペール・ゴリオ ――パリ物語』
バルザック「人間喜劇」セレクション第1巻 鹿島茂・訳 藤原書店


 えっと、とりあえず最初の方がしんどかったです。
情景描写は苦手なので、何度飛ばそうかと思いました。
でも、なんとか粘ったところ、最後の解説で鹿島氏が

「冒頭の三十数ページ、ヴォケール館の描写が終わってストーリーが流れ出すまで、たとえ退屈でもなんとか我慢して読み続けてください。」

と、書いていたので、ちょっと「よくやった、自分!」な気分になってしまいました。
しんどいと言っても、ヴォケール館描写を抜けて人物描写になると楽しくなってきたので、8Pの忍耐でした。短い短い♪

 昨日も書きましたが、ゴリオ爺さんというタイトルで知られている話ですが、ゴリオ爺さんだけではなく、実際は社交界入りの野心を持った青年・ラスティニャックと、私が愛する悪党・ヴォートランを主軸に、ヴォケール館の住人や社交界の婦人方も入り乱れての、ちょっとした群像劇みたいなものでした。
(しかし、ついに愛する発言まで到達してしまいましたよ、この人は)
 鹿島氏が「グランド・ホテル形式」と述べていますが、本当にそんな感じです。
(余談ですが、岡さんの男爵を見にいけなかったのは残念でした。)

 色々と訳本は出ていますが、この藤原書店の本はオススメです!!
訳が全然堅苦しくなくて読みやすいし、挿絵が入って分かりやすい。
最後に、この作品に出てくる馬車のイラスト入り説明と貨幣の円との比較、解りやすい解説や素敵対談がついていて、ものすごく気に入りました。
いいなぁ、この本欲しい。(私が読んだのは、学校図書館の借り物)

 

 ちなみにここからは、全面的ネタバレです






 もう「これでもか!!」ってくらいに2人の娘に尽くしまくって、自分は一文無しになって、それでも尽くして、愛してしまうゴリオ爺さん、69歳・元製麺業者。娘が全てで、他のことには何の欲も持っていません。その代わり娘に注ぐ愛情はもう並じゃない。ラスティニャックのチョッキに次女が顔を埋めて泣いたと聞くと、「そのチョッキをあたしにくださらんか?」だし。娘が自分のことを愛していると信じきっている人。正直に言って、読んでいる方は娘2人の振る舞いを知っているから、「かわいそうだけど、おめでたい人」と思ってしまう。周りのことが全然見えてない、文字通り盲目的なまでの愛情。すごいとしか言い様がありません。すごいけど・・・、ちょっと引いちゃいました。
 だけど、最期に2人とも来ないとなった時に「全部知っていた」と、嘆くのは本当に哀れ。長々と「娘に会いたい」と言い続ける彼を見ていると、「コゼットとマリウスが間に合って本当によかった。」と、関係のないことを考えてしまったりします(byレミゼ)。でもゴリオ爺さん、哀れだけど・・・、確かに娘の薄情とあなたの甘やかしすぎは関係大有りだと思うよ、うん。

 ラスティニャックは、一番感情移入しにくくて、でも一番感情移入しやすい人(どっちだよ)。立身出世を狙って親戚のツテとか、親と妹にお金の工面とかを駆使して上り詰めようとするけれど、その反面ずっと迷い続けている人。結構コロコロ気持ちが変わるけれど、その辺が共感できる。特に、お金が手に入るとその悩みも忘れて使っちゃう辺り(笑)。
 最後まで悩み続けて、ボーセアン夫人の隠退(?)とゴリオ爺さんの死を見届け、パリの街に、社交界に宣戦布告する。最初は好きでも何でもなかったけど、最後のほうの視野が広くなった彼は、格好いいです。ゴリオ爺さんに献身的に尽くしたのも、結局彼とビアンションだったし。最後まで良心を失っていなかった辺りが嬉しかったです。ナサニエルみたいに(ちょっと違う?)。

 彼があそこまで社交界にあこがれる気持ちは分からないけれども、それは、「詩情のない貧困、けちくさく、鬱積した、磨耗した貧困」の支配する、「老若男女の下宿人の一人一人の体から出る「独特の」カタル性発散物の、むかつくような成分を分析できる装置が発明された」ときに描写できるような臭いの下宿にいたこともなければ、食うのにも学費にも困ったことのない、物質的に恵まれた日本で生きているからなんだろうな、きっと。解説とか読んでいると、何となく地獄のようだと感じる社交界に、それでも入ろうとするのが解るような気はするけれど、彼の目を通して見た社交界は、華やかな反面、残酷なところで、生きていくのはとても過酷な場所に見えたので、成功すると本当に大きいけれど、地道に学業で弁護士とかになるのとどっちがいいかなんて、一概には言えないんだろうな、と思いました。

 で、ヴォートランですが・・・。すみません、惚れました・・・。(爆)

ううん、大丈夫!!警部の方がずっと好きだから!!!同じヴィドック族(?)でも、ジャベに勝る愛なんてないから(意味不明)!!!

 と、取り乱してしまうくらい格好良かったです。最初は確かに贔屓目で見ていましたが、彼がラスティニャックを誘惑するために演説しちゃう辺りは、ラスティニャックに「隣代われ!!」と、叫んでしまいたくなるくらいうっとりと聞いてしまいました。あれだけの説得力を持って、「君が好きだ」だの、「君のためだ」なんて織り交ぜながら、これで成功するなどと説かれてしまったら、うっかり聞き入ってしまいますって(いや、本当に)。言ってる内容がさり気にえげつないのも和らげられてる気になって、とても危ないです。でも、シビアなことをずけずけ言っちゃうところがまた格好いい。脳内でジャヴェール警部の軽蔑の眼差しが見えた気がしたので、慌てて冷静に戻りましたけど。そうそう、ラスティニャックの額に激しいキスをした時、激しくラスティニャックが羨ましかったなんて気のせいですとも!!
 ”トロンプ=ラ=モール”<不死者>なんて名前がついているのがまたもう・・・!!人望と才能に溢れた脱獄囚。凄腕の銃や剣の使い手。自分に良くしてくれる人や心意気が合う人には親切で、そうでない人は何とも思わない性格。その親切と悪党の対照的なところがもう・・・。これだけ格好いいところがぞろぞろ挙げられちゃ、指の毛や胸毛が濃かろうが、筋肉質だろうが、40過ぎだろうが(いや、これは問題なし)、品がなかろうが、無問題!悪党なのは少々問題ですが、それゆえの格好良さって、どうしようもないです。
 捕まる時のあの堂々とした態度も立派です、立派過ぎます(涙)。ラスティニャックには、もとい、若くて美しい青年にはとことん優しく誠実なところも良し!悪党だけど、あれだけ器が大きくて、皮肉混じりに哲学を披露されちゃ、惚れてしまいま・・・、あ、警部、待って!軽蔑しないで下さい~(涙)!!


 解説のところでもかなり書かれていますが、人物が本当に一人ひとり細かいというか、目の前に浮かんでくるというか、言い得て妙というか、すごくリアルです。確かに最初の方の描写は読み飛ばしちゃダメだと思いました。風貌とか一旦読んでしまったら、その後頭の中で彼らが動きます、本当に。そうなると、しめたもの。ヴォケール館や伯爵夫人の館の中にいるように錯覚してしまう瞬間が訪れます。大げさかもしれませんが、私はそう感じました。

<対談について>
 面白いです、鹿島茂氏と中野翠氏の対談。一番ウケたのは、ヴォートランの話のところで「やおい」が出てくるところ。ええ、「やおい」とヴォートランは全然違いますとも!
・・・どこがって言われてもちょっと困るけど、そういう萌えは感じませんでした(汗)。



 さて、次は『幻滅』だ・・・・。

と、思っていたのですが、予想よりも早く他図書館から取り寄せてきた『九十三年』(青少年用しか読んだことがなかったので)や『海で働く人びと』が着いてしまったので悩んでいます。

どれから読もう・・・?
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by otokata | 2006-02-04 21:28 | 読書