コロコロと興味の対象が移り行く音方による、日々の熱い物を綴ってみた日記。   ※アダルト・商業系サイトやここの記事とあまりにもかけ離れたTBやコメントは削除させて頂いています。悪しからずご了承下さい。


by otokata
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幻滅


 バルザックの『幻滅』を読み終えました。上下巻あわせて2週間って、どんだけかかってるんだか・・・。

『幻滅――メディア戦記』
バルザック「人間喜劇」セレクション第4・5巻 野崎歓+青木真紀子・訳 藤原書店

 ヴォートラン三部作第二弾です。と、言ってもヴォートランは最後の最後まで出てきませんが。(思いっきり焦らされてる気分)でも、出てきたらそれはもう格好よく彼一流の哲学を披露してくれます。ラスティニャックの名前を聞いて体をびくりとさせるところとか、最高にツボです(そこかい)!!とにかくこれで3部作目への期待が高まります。

 <あらすじ>
 フランスのルモーという下町出身の美形青年詩人・リュシアンは、アングレームという貴族階級が住む高台の社交界の女王・バルジュトン夫人に気に入られ、彼女と駆け落ち同然でパリへ。文学の道で大成するはずが、バルジュトン夫人に棄てられ、社交界で屈辱を味わい、一時は真面目に「セナークル」という崇高で理想主義的な仲間と交わり、勉学に励んで頑張ろうとするものの、仲間の反対も聞かずに手っ取り早く成功できそうなジャーナリストの世界へズルズルとまっしぐら・・・。

 って感じです。




 とにかくこのリュシアン、自分の信念はないのか!!ってくらいに楽に成功できそうな方へ、周りの状況次第で簡単にズルズルいっちゃうのです。それでも、超絶美貌と、持ち前の才気を武器に女優を愛人にしたり、初めての記事で大成功を収めたりと、何だかうまくいってしまうのですよね。けどお子様なので、周りが計算ずくでちやほやしてることに気づかずに調子に乗って、そのうち自滅するタイプ。弱虫で、軽薄で、快楽には99.9%勝てなくて、友人のことも考えたりするけど、あらゆるところで裏目に出るようなタイプ。主義主張もなく(パリにいる間に感化されたせいでもあるけど)、簡単に自由主義から王党派へも移っちゃう。お金は稼いだ端から使っちゃう。
 本の最後の対談とかでは、バルザックの理想像(美貌とか、モテるところとか)って書いてあったけど、この軽薄ぶりを「いっそ清々しい」って思うまでに大分かかった。ここまでやらかしてくれると清々しいけど、私はダメだ。リュシアン好きになれない。『娼婦の栄光と悲惨』では、また別の変身をしてくれるみたいなので、そこに期待します。

 リュシアンは、ルモーに親友がいて、業突張りの親父さんをもったダヴィッドっていう青年です。このオヤジさんが印刷業で成り上がったので、倅もそれを継いだのですが、この人がまたいい人で、リュシアンの妹・エーヴと結婚し、「リュシアンとエーヴのためにもっと安上がりの紙を発明するんだ」と、発明に精を出して極貧の中を頑張っております。
 サブタイトルの”メディア戦記”が示すように、ダヴィッドのいる印刷工場から新聞社の裏側まで、本当に詳細に書かれています。興味が全くなくても、あんまり魑魅魍魎がうようよしてるもんだから、退屈することはありません。すごいなー、出版業界の裏側。今でもあんまり変わらない、みたいにあとがきとかで書かれてるってことがまたすごいです。

 ジャーナリストの信条としては金が全て!そのためには素晴らしい本でもこき下ろして、チケットを多くくれる劇場を持ち上げて、嫌いな人間を攻撃して、儲かりそうな主義につき、都合が悪くなれば匿名で記事を書く。そこに正義なんかありゃしません。ペンはお金を生み出す手段です。それをジャーナリストの先輩・ルストー達が懇切丁寧に教えてくれます。

 個人的に好きだったのは、「セナークル」の面々。
小説家・ダルテスを中心に、画家や思想家、医学生など、若い才能が清貧の生活の中で、堕落を憎み、理想に燃えて、固い友情で結ばれて、日ごと議論して・・・。
まるでABC友の会のようだ・・・。
最近自堕落気味の音方としては、ダルテスの語る一言一言に、グサグサッと胸をやられてしまいました。この小説の中で、数少ない根っから善良な人々です。対談してた山田氏が、「リュシアンの方は弱虫で悪なんだけど、断然魅力がある。」と書いていましたが、私は断然ダルテスの方が好きです。
 「定期的に後悔を繰り返すということを、ぼくは大きな偽善とみなしているんだ」 
禁欲的に強い意志を持ったダルテスだからこそ、こんなセリフが出てくるんですよ。リュシアンだけでなく、私もうちひしがれちゃいました。すごいなぁ、尊敬に値します。
 
 どうでもいいけど、解説とか対談とかを読んでいると、そこまで読み込めないし、面白いと思うポイントも見事にずれてるので、ちょっと凹みました。感想を書けばミーハーになるし。まあ、いっか。

 さて、WOWOWで録った『オペラ座の怪人』でも見直そう!
公開当初、昔のサイトの日記でも書いた記憶があるけど、『Think of me』のクリスティーヌはエリザベートの衣装に、マスカレードのラウルの髪型はジャヴェールに似てると思うのですが・・・。ああ、気になる!!
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by otokata | 2006-02-26 23:37 | 読書